Article: 「刻々無地」とは? なぜファーストコレクションは「刻々無地」だったのか?名前に込めた想い。

「刻々無地」とは? なぜファーストコレクションは「刻々無地」だったのか?名前に込めた想い。
名前に込めた想い。

COCONをリブートするにあたり、
私たちはまず「原点」に立ち返りました。
装飾ではなく、本質。
流行ではなく、永続。
では、ネクタイにおける本質とは何か。
それは・・・
織りそのものの美しさです。
世界のアーカイブを巡って

これまで私たちは、世界中のシルクテキスタイル機場を巡り、
何万点もの生地アーカイブを見てきました。
その中で心を打たれたのが、
日本の家紋や、スコットランドのタータンのように、
一つ一つに名前が与えられたトラッドストライプコレクション。
縞の幅。
配色。
そのすべてが正確に記録され、受け継がれていく。
そこには、単なる柄を超えた「文化」がありました。
そして気づきます。
多くの伝統的ストライプが、
レップ織りでアーカイブされているという事実に。
なぜ、レップなのか。

ネクタイの柄表現の大半は、緯糸で成り立ちます。
緯糸の色をどれだけストレートに表現できるか。
選択肢は、サテン(繻子)か、レップ(陣目)か。
他の織りでは経糸が表に出てしまい、
色が濁る。
そしてもう一つ、
アーカイブとして残すための条件・・・
それは耐久性。
長い年月を経ても毛羽立たず、
縞の輪郭を崩さない。
その答えが、レップ織りでした。
色を正確に刻み、時間に耐える織り。
それがレップなのです。
原点を、今の最高技術で。

COCONは決めました。
ネクタイ生地の「基本中の基本」であるレップを、
いま日本が持つ最高峰の技術で織り上げ、
アーカイブとして残す。
それが、リブートの第一歩だと。
しかし・・・
理想は、簡単には形になりませんでした。
理想と現実の狭間

刻々のレップは、
畝をやや太めに設定し、
緯糸の打ち込みを極限まで高めました。
絹の光沢を最大限に引き出し、
色を限りなく純度高く表現するために。
その結果、生まれた生地は圧倒的でした。
しかし同時に、
密度が高すぎて、
針が通らない。
職人が一本だけ縫い上げてくれたものの、
量産は不可能という結論。
さらに、生地が硬く、
製品にした際にアタリが出やすい。
理想が、製品を拒む。
それでも、
諦めるという選択肢はありませんでした。
もう一段、技術を重ねる

機場と何度も議論を重ね、
通常のネクタイでは行わない特殊整理加工を施すことを決断。
生地にしなやかさを与え、
針通りを改善。
さらに、セッテピエゲ用には
裏面に絹紡糸を全面に配するバッファー構造を考案。
美しさを守るために、
見えない部分にこそ手間を重ねる。
そうしてようやく、
COCONが描く理想のレップが完成しました。
「刻々」という名

レップの畝は、
まるで枯山水の砂紋のよう。
整然と、静かに、しかし確かに存在する美。
時間は刻々と流れ、
人は移ろい、
時代も変わる。
それでも変わらず刻まれるものがある。
技術。
美意識。
思想。
そのすべてを、
一畝一畝に刻み込む。
だから、
この無地は「刻々無地」。
無地でありながら、
最も雄弁な生地。
COCONの原点であり、
未来へと受け継ぐための最初の一歩です。




